暮らしの武将

暮らしや仕事に役立つ戦国武将の知恵やエピソードをご紹介いたします。

出世したい

サラリーマンたるものやっぱり出世はしたいですよね。
では、出世する人ってどんな人なんでしょう。

仕事が出来る人?
意識の高い人?
論理的思考が出来る人?

今日はその答えの一つを教えてくれる戦国武将をご紹介したいと思います。

彼の名前は
田中 吉政

近江国(現在の滋賀県)の普通の農民から、
筑後(福岡県南部)一国32万石の国持ち大名にまで出世した武将です。

さぞかし素晴らしい武功があると思うでしょ?
ところがこの吉政、
戦況が不利になるとみるや、
目下の役廻りである伝令のふりをして、
後方へ逃走を計るというせこい手段を平気で使う男なのです。

周りにもいませんか?
いざお会計となると必ずトイレに行って帰ってこない人。
スケールは違いますが、
そんなタイプですね。

ではなぜそんな男が農民から大名にまで出世できたのか。

それは、
誰からも愛された人だったから。
だと、私は思います。

どうやら吉政は、
あまり物事にこだわらない闊達な人柄で、
そのうえ素直な人物だったようです。

たとえば、
侍になるために羽織袴を紺屋に作らせた時の話。
紺屋は本来の家紋とは左右逆に染めてしまった。
吉政は怒るでもなく、逆のまま家紋にしてしまったり・・・

まだ足軽身分の時代に、
枡を枕に昼寝をしていると、
傍らの盲人から
「これから一国一城の主になろうという人が、
大切な米を量る枡を枕にするとは何事か!」と叱られれば、
よくぞ叱ってくれたと御礼をしたり・・・

5万石の領主になってからも、
城下の見回りの中に空腹になると、
城から弁当を届けさせ、
領民と一緒に道端で食べたり・・・

そんなところが身分の上下を問わず誰からも愛されたのでしょう。

なにしろ、
関ヶ原の合戦で敗れ、逃亡中の石田三成が吉政に捕まった時に、
「同じ捕まるのならば、お前に捕まって良かった。」
と言ったくらいの愛されキャラなのですよ。

どんなに仕事が出来ても、
周りに足を引っ張られては成果は上がりませんよね。
上司、同僚、部下から愛され、
多少の失敗ならカバーしてもらえるような人柄。
これが出世する人の条件なのではないかと思うわけです。

実は、
枡の話には後日談があります。
吉政が筑後の大大名となり、入国した時の事。
集まった群衆の中に彼の盲人を発見。
再会を喜んだ吉政は、
盲人を検校(盲人の方に与えられる最高官位)として召しだし、
晩年まで面倒をみたそうです。
めでたしめでたし。

 

次回の更新は11月13日予定です。